6月22日付けの日経新聞でアメリカ・アドビシステムのテレワークの記事が載ってました。
気になるところを抜粋すると
先日、米アドビは同社の「クリエイティブクラウド」で提供する様々なアオ付とウェアを大幅にアップデートした、なかにはクラウド上での共同作業を容易にする機能強化もあった。
(略)
これまではデザインをデザイナーがPDFで出力し、担当者にメールで送付・担当者は管理者にメールを転送・管理者はそこに修正を書き込んでメールを発信し、それを受け取った担当者がデザイナーに転送する、といった面倒な作業が繰り返されていた。
(略)
「コロナ禍によって新しいツールを使って仕事をせざるを得ない状況になった。今回のアップデートでは特に共同作業の機能に力を入れた。」
というところで、有数のIT企業である「アドビ」でも、今まで、仕事がIT化されているといっても、あたかも「紙の書類」を受け渡すような感じで仕事が進められていた、っていうのはちょっと驚きではあるのですが、今回の「コロナ禍による強制的なリモートワーク」の波は、今までの企業文化をざーっと洗い流してしまったようですね。。
で、このへんのところは、今回、望む望まないに拘らず、強制的にリモートワークをやらざるを得なかった日本企業の「仕事のやり方」でも起きるんじゃないかな、と思うところです。
リモートワークによって、今まで個人の頭の中であるとか、一人作業のなかで表面にでてこなかった「仕事のやり方」であるとか、阿吽の呼吸に代表される「テレパシーのような仕事管理、人事管理」を「見える化」していくのではないかな、と思っているところなのです。
つまり、対面によるコミュニケーションによって「ぼんやりと理解していたこと」、雰囲気で伝えていた仕事の指示、顔付きや無言で現していた意見や態度表明といったものが、リモートになることによって、ほとんど通用しなくなって、「文章化」「見える化」「明確化」の要請が一挙に高まっているような気がしています。この状況は、これまでの日本の企業文化の中で課題とされていた「仕事のスタイル」を大きく改善する可能性を秘めている、といっていいんじゃないでしょうか。
さらにいうと、テレワーク、リモートワークというのは、「ノマド」ブームのようにトレンディな一部の人がファッションのようになるのではなく、フツーの会社員の人が、職場ぐるみで強制的なやらなくてはいけない状況になり、しかも新型コロナウィルスのワクチン開発などの感染症対策のこともあって一過性では済みそうにない、っていうのもこれからの変化の大きさと長さを感じさせるところです。
そして、医療とか介護とか、今までは「リモート」なんてのはおよそ無理と扱われていたところまで、強制的に取り組まないといけない、というところに広がりの大きさも感じますね。
特に介護は、当方が近くの福祉事業に従事している人を見ていると、人と人とが接する職業であるだけに、デジタルへの拒否感というか敬遠感があるのは間違いなくて、病理的に「距離を取る」ことが求められていく中で、介護のやり方とかがどう変化していくのは興味があるところですね。根幹のところでデジタル化、機会化が浸透しないともたないような気がしています。
リモートワークの「通勤時間削減」効果もいいですが、それだけに終わらず、「働き方」とか「暮らし方」を大きく変えるきっかけになるといいですね。ただ、最近見かけるようになってきた、リゾート地や田舎で仕事とレジャーが両方満喫できるぜ、イェーイ、ってな方向へいくと、「リモートワーク」は昔の「ノマドワーク」と一緒で、いつの間にか廃れていってしまう気がするのですが、いかがでしょうか。
ちなみに「リモートワーク」に関する本はノウハウ本も含めて、雨後の筍のように出版され始めているのですが、思想的なところも含めた「古典」といえば、このジェイソン・フリードさんの「強いチームはオフィスを捨てる」あたりがおすすめですね。