2012年12月31日月曜日

今年も、お世話になりました。

年の瀬も押し詰まり、大晦日である。
大晦日が、昨日と何が変わっているか、となると日付けぐらいのことなのだが、何かしら、年が改まると良きことがありそうに思えるから不思議。
ここからは、私の思いつきに近いのだが、『封印』ということがふさわしいように思う。一年を過ごすと、そこには、良いことばかりではなく、思い通りにいかなかったことも数多くあるわけだが、それらを封印し、浄化された風を呼び寄せる。そういった効果か、この年を改める、という行為に込められているように思う。
まあ、何はともあれ、今年もお世話になりました。良き新年をお迎えください。

2012年12月30日日曜日

大石哲之「コンサルタントの読書術 確実に成果につながる読書のススメ」

ノマド論争などではいろいろと物議のあった大石哲之氏なのだが、Kindle本でかなり購入しやすいい価格で提供されていたので、おもわず購入してみた。
 
内容的には、コンサルタントという仕事を媒介にして、いかに短期間で、いかに効果的な提案をするためには、どういう読書法をしたらいいのか、ということに絞って書かれているのが本書。
 
構成は
 
第1章 1冊の本から多くを学ばない
第2章 読むべき本はこうして選ぶ
第3章 「ロジカルシンキング」で本を読む
第4章 読書を確実な成果につなげる
 
となっていて、基本的に「いい仕事」をするための読書はどうしたらいいか、に絞った本といっていい。
 
章ごとの要約は書評でもなんでもない、と本書の中でも厳しく注意されているので、私的に印象の残ったあたりを引用すると
 
本を読むときのポイントは
①本を全部読もうとしない。始めから読まない
②必要な部分はゆっくりでもいいので考えながら読む
③事実、解釈、アクションを読み分ける
④読書のPDCAサイクルを回す
⑤読むことに集中できない要素は思い切って排除する
 
で、「本」というものを聖物化しないためには
 
本に対してもウェブと同じような感覚で接する。本も情報を売るための一つのツールと割り切る
 
本は1500円の紙束コレクションだと考える
 
といったところとか
 
未知の分野を効率的に、しかも短時間に学ぶには
 
同じテーマの複数の本を同時に買う(最低でも5冊、多い場合は10冊)
 
買った本を集中して読む
 
1冊の本を丁寧に読むより、10冊をラフに読んだほうが理解のスピードは速い
 
10冊読んで、同じことが出てきているものは、その分野のスキル取得にあたって、肝となる部分。なので、その肝の部分だけをしっかり身につければいい
 
といったところか。
 
まあ、なににせよ知的生産を「より速く」「より効率的に」「より価値あるものを」提供するか、といったことに特化した方法論が記述されていると考えていい。
 
 
このレビューを書いた現在、かなりの低価で提供されている。特売セールといっていいだろう。Kindle本が読める端末を所有の方は、あまり悩まずに購入したほうがいいと思う。
本書にあるように「Quick & Dirty」といった具合にね。

 

2012年12月29日土曜日

仲山進也「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則」

副題に「ジャイアントキリングの流儀」とあるように、人気マンガの「ジャイキリ」の各場面を使いながら、組織作りについて論じているのが本書。

著者は楽天大学の学長さんで、まあ、楽天のマネジメントなどの本筋をよく知っている人と考えていいだろう。


構成は


はじめに
今いるメンバーで
まわりの期待を超える(ジャイアントキリングを起こせる)チームをつくるには


第1章 新チーム始動 ステージ1 フォーミング
「何でも思い通りにいって何が楽しいよ。
俺が楽しいのは、俺の頭の中よりスゲーことが起こった時だよ」


第2章 巻き起こる風 ステージ2 ストーミング
「どうせ家建てんならじっくりいい家作んなきゃ」


第3章 チームワークの誕生 ステージ3 ノーミン
「組織として差が出るのは、個々がどれだけ役割以上のことができるかだよ」


第4章 生き物みたいなチーム ステージ4 トランスフォーミング
「勝ちたがってんなら、その想いをケンカしてでもすり合わせすりゃいい。
そうすりゃ相手の考えがわかる。
それが次々広がって、チームっていうひとつの生き物になる」


おわりに
ケーススタディ in 「ジャイアントキリング」


ということになっていて、人が集まっただけの集団(グループ)を戦える「チーム」にどう作り上げていくか、というか変化させていくか、というところを「ジャイキリ」のマンガのシーンを随所に使いながら語られる。


乱暴に要点と思われるところだけを抜き出すと

①最初の頃は、きれいにうまくまとめる(フォーミング)しようとしない。とことんぶつかって混乱に陥ること
②混乱の中から、それぞれが目的やら自分の売りをつかむこと
③ぶつかりあう中で、互いに相手のことを肌感覚でつかみ、いわば「あうん」の呼吸を得ること


そうすると、しゃかりきでなく、遊んでいるように見えて、のびのびと、期待以上の成果が出るもんですよ、という具合か。


非常によくわかる主張なのだが、マンガという、イメージで語られるものに依っているせいか、主張自体もイメージとしてはとらえられるのだが、手法などがすぐにはすとんと落ちてこなかったのは、私の読み込みが浅いせいかも。このあたり、ふわふわと読まず、読み返す作業が必要であるようだ。

今のところ、前半の、フォーミング(まとめ上げ)しようとするな、ストーミング(混乱)が大事、というあたりが、期限に迫られた仕事をしていると、目先の益や効果に惹かれて、即効性をつい追及してしまいがちな我が身には、ちと痛い。



今のところは、さっくりと一読した段階なので、ポイント、ポイントを抽出しながら、自分なりにチームづくりについて考えてみようと思わせるあたりが本書の評価すべきところか。

ドキュメントスキャナを使った書類・データ管理

ライフハッカーの20012.29付けの「書類のデータ化をストレスにしないためのドキュメントスキャナ使用術」に、美崎栄一郎さんの使い方が紹介されていた。
ドキュメントスキャナの使いかtあというよりは、ドキュメントスキャナを使ったデータ管理、書類管理の方法といったほうがぴったりくる内容。

美崎さんのやり方は
①書類はもれなくスキャンする。机の上に書類用の箱をつくっておいて、ある程度まとまったらスキャンする。
②ファイル名はつけかえず全部まとめて時系列で管理(ドキュメントスキャナを使っていない人のためにあえて付言すると、スキャナソフトの仕様で、スキャンするときに自動で日付でファイル名が保存できるようになっている)
③コンパクトスキャナは、パソコンを置く台の下にいれておき、スキャン後のデスクの向こう側に貯まった書類はまとめて捨てる
というのが基本の様子で、

個人的には、①については同感。あれはスキャンしてこれは紙のままで、なんてことを考えるとスキャニング前の作業が増えるので、スキャニング自体が面倒になる。ここはなにも考えずにスキャニングを自動化するのがいい。

③については執務スペースはそれぞれだろうから、その場に応じて、ということで良いかと
私のやり方とちょっと違うのが②のところ。私もやってくる紙書類は領収書から仕事の書類まで、ほぼあまねくスキャンすることにしいているのだが、そうすると一日にスキャンする者が大量になって、日付だけでは一覧的に管理できなくなってしまう。つまり領収書などのプライベートなものから、仕事の書類も、あれやこれやがごちゃまぜになるので、ファイルビューで一覧しても中身がきちんと一覧できない(特に仕事の書類はかなりレイアウトが似通っているから)のだ。

ということで、ファイル名については、ごく簡単な名称と日付をつけておくことにしている。日付はアプリで自動的につけられるので、やることは大ジャンルとその書類の内容がおおよそ推測できる名前を「A社_○○提案_20121229」といった風な形で管理するようにしている。この場合、日付データは必須なことは美崎さんの管理方法と同じ。

あと付け加えるなら、スキャンしたデータを保管するフォルダをDropboxなどのクラウドにしておくこと。たとえばDropboxのフォルダ内に「Scansnap→」といったようなフォルダをつくっておき、必ずそこに一時保管すること(一時保管というのは、時間がたてば別のArchive用のフォルダに移すことにしているため)。
クラウドに保存しておけば、複数のPCやスマホやタブレットなどで同じデータを扱えるので、どこでも参照できる。こうすると、紙を超えた閲覧の自由が手にはいるというわけ。

2012年12月24日月曜日

職場のペーパーレス化の失敗と電子新聞の失敗の共通項はあるか

J-CASTニュースのビジネス&メディアウオッチの「紙の呪縛から解放されることが必要だ 電子新聞ザ・デイリー廃刊から学ぶ教訓」で鳴り物入りで始まったルパート・マードックのザ・デイリーが失敗した理由が論評されているのだが、それによると、少なくとも
 
①タブレット端末だけを掲載メディアとする電子版は商売として成立しない
②デジタル刊行物は紙の呪縛から解放されねばならない
③三番目の焦点はビジネスモデル
 
ということがいえるとのことであったのだが、個人的に興味を惹かれたのは②のところ
 
電子出版にしろ電子新聞にしろ、強固に紙メディアが存在するものは、どうしても紙の出版形態に引っ張られ、配信形態にしろ、販売方式にしろそれに引っ張られることが多いのは事実。というのも、1章ごと切り売りしている電子書籍というはあまりお目にかかったことはないし、新聞にしても朝刊、夕刊という形で配信される紙の新聞を模したものが中心で、紙の新聞の形態であるものが随時更新されるという形はないのではなかろうか。
 
で、横道にいくと、ビジネス現場における「書類」というやつにも同じ事がいえて、いくら職場内でグループウェアが使われるようになっても、有り様は、紙の書類の電子版を、そのまま掲示する、あるいは、紙の書類を電子的に展開したものを見せる、という使われ方がほとんどのような気がしている。「紙」と「電子媒体」を比べてみると、書類としての一覧性は「紙」に軍配が上がるし、昨今のセキュリティ強化のおかげで、PCやタブレットの持ち込み制限、特に私的なものの制限がきついままの職場はまだまだ多いのが、「紙」が職場から増えこそすれ、減ることのない原因であるのかもしれない。
 
職場における「紙」の減量は、いかに仕事の進め方から「紙の呪縛」を少なくしていくか、という概念的な問題にかかっているような気がする。オフィスの紙の減量には手紙が「メール」に変わった時以上に、概念的に「紙の呪縛」から脱するかをもう少し掘り下げて考える必要があるのかもしれないですね。

2012年12月22日土曜日

「電子書籍リーダー」は明治時代始めの「牛鍋」的存在か?

ここ数日、うちの奥さんが入院していて、入院中の暇つぶしに、と私のKoboに軽めのミステリー(重くなくて、ホラーっぽくもないやつ。病院でこうしたホラー系はちょっと読めないものね)の自炊本やらをいれて渡していたのだが、病院内で看護士さんあたりからは、「へー、これが電子書籍ですか、薄いですねー」とか「初めて見た」といった反応らしい。
 
ネットの世界をぶらぶらする生活をしていると、つい、その世界や周辺にあることがらが、既に日常的な状態と思ってしまうのだが、今、大流行の(と私は思っている)KindleやKobo(Kobo端末は流行とはいえないでしょうが)といった電子書籍リーダーも、まだまだ一部のものかな、と痛感しした次第。
まあ、正直のところ、私の住まう辺境地では、Kindle PaperWhiteどころか、Koboの姿なんぞも見ないような状況。iPadあたりはさすがに、個人所有者を持ち歩いている人を見かけるようになり、スマホ人口は急増しているのだが、このあたり、」アーリーアダプターがうじゃうじゃいる都会地とは、事情が大変に異なっているんである。このあたり、明治時代当初、横浜や銀座では盛んに食べられ、文明開花の証のように扱われていた「牛鍋」が、地方部ではまだまだ、どころか肉食(にくじき)の文化すら疎まれていたのと、まあ似たり寄ったりか。
 
で、牽強付会かもしれないが、こうしたガジェットの普及の遅さというのが、実は、地方の定住人口がなかなか増えず、都会地へ若者が出てしまって帰らない、といった今の地方部での移住定住問題がなかなかはかばかしくいかない原因の一つではなかろうか。
というのも若者のかなりの部分は、様々な分野でのアーリーアダプターであるし、そのアーリーアダプターたちが、それを自慢できない社会ってのは、若い人や少し尖っていて時代をリードする人には、物足りない社会でもあるように思うからだ。
 
移住定住対策で「自然」を売り物にするのはいいと思うのだが、それとセットでいわゆるネット環境やWifi環境、あるいは都会地の流行情報をいかにダイレクトに流し込むか、かをセットで考えないといけないのかもしれないですね。
 

2012年12月16日日曜日

ダニエル・ピンク「フリーエージェント社会の到来」

最近は下火傾向にあるのかもしれないが、賛成から反対、あるいは無関心まで、幅広い振れ方で議論されている「ノマド論」なのだが、本書においてかなりの部分は語られているといっていい。個人的な見解をあえていえば、様々なノマド本を読むならば、まず最初に本書を読んでからかかったほうが、俯瞰的な立ち位置が確保できると思う。
 
構成は
 
第Ⅰ部 フリーエージェント時代の幕開け
 第1章 組織人間の時代の終わり
 第2章 3300万人のフリーエージェントたち
 第3章 デジタルマルクス主義の登場
 
第Ⅱ部 働き方の新たな常識
 第4章 新しい労働倫理
 第5章 仕事のポートフォリオと分散投資
 第6章 仕事と時間の曖昧な関係
 
第Ⅲ部 組織に縛られない生き方
 第7章 人と人との新しい結びつき
 第8章 互恵的な利他主義
 第9章 オフィスに変わる「第三の場所」
 第10章 仲介業者、エージェント、コーチ
 第11章 「自分サイズ」のライフスタイル
 
第Ⅳ部 フリーエージェントを妨げるもの
 第12章 古い制度と現実のギャップ
 第13章 万年臨時社員と新しい労働環境
 
第Ⅴ部
 第14章 リタイヤからeリタイヤへ
 第15章 テイラーメイド主義の教育
 第16章 生活空間と仕事場の穏やかな融合
 第17章 個人が株式を発行する
 第18章 ジャストタイム政治
 第19章 ビジネス、キャリア、コミュニティーの未来像
 
 
となっていて、本書を読んでから、日本のノマド論を見ると、組織への帰属の問題と仕事の場所の議論にこだわりすぎているような気がしてくる。その点、組織への帰属や縛りが日本に比べて緩やかなアメリカを基礎におく本書の議論は、組織への帰属から解き放たれた時における人と人とのすながりやコミュニケーションをどうととるか、といった点や、単にスタバでMAC airを広げていたらノマド的働き方だといった浅薄な話ではなく、ホームオフィスを含めた仕事の場所のあり方が論じられるあたり、かなり深い議論がされているような気がする。
 
第Ⅰ部から第Ⅲ部までが多くのノマド論、ノマド本で語られる、ビジネススタイルの変化、あるいはそれに起因するライフスタイルの変化(例えば、決まった仕事場をもたなくなる、フリーになるといったことだ)について語られるのだが、さらに、本書のすごいところは、そこからさらに踏み込んで、第Ⅳ部でノマド型のワークスタイルがもたらす新たな貧困の出現であるし、第Ⅴ部で語られる、ノマドあるいはフリーエージェント型の社会がもたらすビジネスにおける資金調達の方法であり、政治のスタイルの変化であろう。
 
 
まあ、読んだから、どう、ということもないのだが、ノマドについて何か思うところある人は、2002年という少し刊行が古い本ではあるが、賛成派も反対派も読んでおいて損はないと思う一冊である。